認知症の父が保証人になったが、契約を取り消すことはできるか



契約を無効にすることができるか

契約が成立するためには、契約者に一定レベル以上の判断能力があり、脅されているなどがない自由な状態の元に行われる必要があります。

意思能力のない人や、意思能力の極端に低い人が行った契約行為は無効とされます。重度の認知症の人が行った契約行為もこれに当てはまります。

実際にこのような問題が裁判にまで発展し、いくつかの判決が下されています。

「認知症の人が貸金業者と結んだ連帯保証契約が無効になったケース」もあります。このケースの場合は、契約当時に意思能力を欠いていたということでこのような判決が下されています。

他にも「知的障害者の男性が金銭消費貸借の連帯保証人契約が無効になったケース」があります。このケースの場合は、契約当時に意思能力がなかったことを理由に無効になったようです。

契約当時に意思能力があったかどうかが問題になるようです。

この点からいうと、認知症というのはなかなか難しい症状といえます。なぜなら、認知症といってもその症状は様々だからです。

意思能力がないほど症状の重い人もいますし、判断能力が衰えているとはいえ契約を結ぶのに支障のない場合もあります。

実際の症状でいえば、長年連れ添った妻や夫の顔や名前もわからない人もいますし、物忘れ程度の人もいます。

さらに契約といっても、安価な日常生活品を購入このするといった契約から、何千万円単位の契約もあります。その契約によって必要とされる意思能力のレベルの違いがあります。

つまり、今回の「認知症の父が保証人になった」というケースも、結ばれた契約の重大性、その当時にどの程度の意思能力や判断能力があったのか、という点が問題になるということになります。それに加え、契約相手がどの程度の説明を行ったのか、という点も問題になります。

このあたりの事情が総合的に考慮され、契約時に意思能力があったのかどうかが判断されると思います。

判断能力のない人は民法で守られている

物事を判断することができない人の契約などの法律行為を救済するため、制限行為能力者として保護する制度が民法にはあります。

認知症にかかったひとに対しては、成年被後見人、被保佐人、被補助人の制度が利用できるようになっています。それぞれに保護者がつく制度で、成年後見人、保佐人、補助人がつきます。

成年被後見人、被保佐人、被補助人の制度はそれぞれの判断能力の欠如の程度によって決められます。成年被後見人が一番症状の重い人向けです。

この保護者がつくことで何ができるかというと、「制限行為能力者がした契約」を取り消すことができます。

成年被後見人であれば、日用品の買物などの日常行為以外のすべての契約が取り消せるようになっています。

被保佐人は、保佐人の同意を得ないでした重要な契約を結んだ場合に取り消すことができるようになっています。

被補助人は、補助人の同意を得ないでした重要な契約のうち、家庭裁判所が選んだ契約のみ、取り消せます。

今回の「認知症の父が保証人になった」ケースでもこのような保護制度を利用すれば、契約の取り消しができます。

しかし、この認知症の父親が保護制度を利用する前に保証契約をしたとすると、契約の取り消しはできません。

制限行為能力制度を利用しての契約取り消しができないとなると、「契約当時の意思能力や判断能力がなかったことを主張する」必要があります。

他には認知症の高齢者を契約させた不法性、公序良俗に違反するとしてこの契約を無効すると主張する方法もあります。

保護制度を利用しない場合はなかなか解決が難しくなるので、弁護士に相談することをおすすめします。

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ